「めっき」のものづくりマイスターであり、めっき加工を手がける株式会社ハイライト（茅野市）の代表取締役社長でもある、岡部憲一さんに話を伺いました。

めっきとはどのような仕事なのでしょうか？

「めっき」とは、金属および樹脂などの素材表面に金属を生成させる技術のことです。例えば、自動車エンジン周りの部品には耐熱性・耐摩耗性・耐食性の高い金属、ＯＡ機器や弱電機器などの外観部品には高級感のある金属をめっきします。要求される用途はさまざまなので、めっきに使用する金属や処理方法も千差万別です。ありとあらゆるジャンルの製品にめっき技術は必要不可欠ですので、今後も需要が減ることはない技術といえるでしょう。

めっき作業には、シアンや六価クロムといった環境負荷の大きい処理液なども使用しています。また、水や燃料といった資源も大量に消費するので、地球環境や周囲の住環境への配慮が大切です。うちの工場では屋内に排水処理棟を完備していますが、ここでの処理は、現在の法規制よりも厳しい基準にも対応しています。環境への対応に「やり過ぎ」はないと考えているからです。

どんな時にこの仕事のやりがいや面白さを感じますか？

めっきは、自分のところで製品を作っているわけではないというのが大きな特徴です。「この部品にこういうめっきをしてください」という形で受注するわけですから、お客様が作った部品をお預かりして、めっきという表面処理を施して返す、というイメージです。製造業というよりはサービス業という思いが強いですね。高品質なめっきを納期どおりに納めることで、お客様に喜んでいただける。この仕事をしていて、いちばん達成感を感じるのはそんなときです。

そのためには、技術力が高いだけでは不十分です。不良品を出さないための品質管理、受注量や納期を考慮して工場全体を効率的に動かす生産管理などを含めた、いわば「総合力」がなくては、すべてのお客様に喜んでもらうことは難しいのです。

ものづくりの魅力とは何でしょうか。

私たちの工場には、独自の技術で開発された設備やシステムがいくつかあります。例えば、製品の高品質化はもちろん、自動化・省力化に特化した無電解ニッケルめっき自動機もそうです。ほかにも、排水処理設備の管理システムとして、異常警報メール配信システムも自社開発ですし、ちょっとしたところでは各モーターに取り付けたインバーターにより節電にも力を入れるなど、さまざまなところに独自の工夫が活かされています。ものづくりの技術や発想は、仕事とダイレクトに結びつくところ以外でも役に立ちます。そこが魅力ではないでしょうか。

ものづくりを目指す若者にどんなことを伝えたいですか。

ものづくりマイスターとしての活動以外でも、地元の中学生にものづくりを体験してもらう「名人達人講座」という企画や、高校生の職業体験インターンシップなどで、たくさんの若者たちにものづくりということを伝えてきました。
そういうときに私が最初に言うのは、「遊びたいのなら進学したほうがいい」「勉強したいなら就職しなさい」ということです。就職し、仕事をするためにはその専門分野を勉強するなど、覚えることの多さに驚くと思います。学生より大変なのは当たり前のことです。

そして、インターンシップでうちの会社に来た高校生には、単純作業をまる一日、必ずやってもらうことにしています。ものづくりの仕事をしていると、単純な作業をひたすらこなしていかなければいけない場面というのは多々あるものです。ものづくりの世界に本当に進みたいと考えているのであれば、終わりの見えない作業の大変さを知ってもらうということは、とても大事なことだと思っています。やりがいや達成感というものは、その先にあるものなんです。

人材育成の一環として、社員の資格取得は会社がバックアップ。めっきの特級技能士は社員10名が取得しています

社内で企画・設計して開発された独自のめっき自動機。ものづくりの力の結晶です

法律より厳しい自社基準に対応する屋内型排水処理棟。管理システムや省力化にも、独自の技術が使われています