pic_04_01

1936年創業の中澤勝一建築。長野県松代を拠点に、三代にわたって腕を磨いてきた大工が柱の会社です。近年は、大工の腕を活かして建築家と建てるデザインハウス「N-Design」、古民家再生・リノベーションなどを手がけています。
新築から古民家まで幅広い建築をかなえる“自社大工”の技術育成に力を入れている代表の中澤毅さんに、大工の未来について語っていただきました。

“自社大工”育成にかける想い

中澤勝一建築は、祖父や父、私の弟と三代にわたって大工の技術を引き継いできた会社です。私自身は大工ではなく、大手ゼネコンを経て、2000年に会社の後を継ぐために入社。あらためて私たちの強みは何かと考えた時に、自社大工がいること、そして彼らが長年培ってきた大工の建築技術こそが“中澤勝一建築の家造りの要だ”と気づきました。技術を継承し、大工の地位向上を掲げて、大工を育てる会社になろうと取り組んでいます。そのためにも、業界には個人大工も多いですが、我々は社員大工を抱えて、大工の仕事の安定と技術習得に注力しています。
その一環として、大工の技がより活かせる古民家再生に焦点をあてて、2021年頃から長野市信州新町に古民家モデルハウスを建築しています。

pic_04_02

大工の未来と真摯に向き合う代表の中澤毅さん

正直に言うと、古民家再生のニーズはそれほど多くありません。築100年を超えるような古民家になってくると、冬は寒いのはもちろん、道路に接していなかったり、駐車スペースが確保されていなかったりなど、現代の生活スタイルに合っていないものがほとんどですから。しかし、前例をつくりながらニーズを生み出していけたらと考えて、日本家屋の伝統を受け継ぎ、大工技術を活かせる機会をつくろうと「大工魂」というコンセプトを掲げました。「大工魂」で大切にしているのは、伝統工法を用いながらも、現代に合った快適性を備えた古民家再生を行うこと。家の歴史を引き継ぎながら、さらに100年残していける建築に挑戦しています。
「大工魂」の一番の目的は、伝統工法を実践し、大工の技術水準を向上させていくこと。現代の住宅は、プレカット材の活用や乾式工法など、大工技術を必要としない簡易な建築施工に変わりつつあります。だからこそ弊社では、現代の住宅はもちろん古民家も扱える大工を育てて、大工の価値を高めていきたい。
古民家は大工の教育の場に適しています。たとえば、古い家屋の柱をあらわにすると、リユースしていることに気がつきます。朽ちた柱に手刻みで合わせた新材を継いだり。現代の住宅では考えられませんよね。手仕事だからできる大工の知恵や技術が詰まっていて、とてもおもしろい。将来的には古民家を引き取り、再生から販売するところまでを一貫して担う事業を立ち上げられたらと考えています。

pic_04_03

代表の中澤毅さん

新築も、古民家もできる。中澤勝一建築ならではの強み

私が社長に就任する前はBtoBの仕事がほとんどでした。仕事がもらえるうちはいいけれど、永遠に続くものではありません。価格競争も相まってこれまでと同じようにBtoBの仕事を続けていくことに限界を感じました。
そこで私はBtoCの仕事に変えて、自社商品の仕事をつくっていこうと考えました。そのひとつが、建築家とともにお客さまの理想の住まいづくりを叶える「N-Design」です。デザイン性の高さはもちろん高気密・高断熱に優れた住まいは、四季を通じて快適な空間を実現。「N-Design」は、大工にとっても新築の家をつくるために必要な最新の技術を身につける機会です。

pic_04_11

長野で建築家と建てるデザイン住宅「N-Design」の建築事例。WEBサイトで、秀逸なデザイン住宅を見ることができる

弊社の強みは、自社大工が施工をしていることです。多くのハウスメーカーや工務店は施工を外注しているので、決められた図面通りに仕事をするだけになります。一方で弊社は自社大工なので、お客さまと現場で話したり、お客さまの声に柔軟に応えられます。さらには新築と古民家再生と両方の技術をもつ大工が施工することは、お客さまに高い満足感と安心感を提供できると実感しています。
弊社の場合、若手のうちから伝統構法を習得していきます。最近では率先して技能五輪に出場して、技術向上を図る若手もいます。大工という職業に憧れ、なり手が増えるように、いち会社として大工を抱えながら育て、価値を上げていきたいです。

pic_04_04

技能五輪で社員大工が製作した踏み台。角度や組みを精緻に計画して、木材の切り出しから手づくりで仕上げている

【Another Story】若手が考える大工の未来。手刻みでつくる伝統技術のおもしろさ

ーー2021年技能五輪全国大会に出場した中澤勝一建築の若手大工、原田銀次郎さん。大工になったきっかけや技能五輪出場の経緯、中澤勝一建築で得られたことや大工仕事の魅力を聞きました。

中学生の頃、授業で将来の夢を考える機会がありました。とくになりたいものが思い浮かばず、父親が大工をしていたのでなんとなく「大工」と答えたのがきっかけです。高校では建築科を専攻して、その一環で大工職人がノミを使って作業する様子を見る機会がありました。その姿を見たとき、純粋にノミやカンナを使った大工の仕事に憧れました。

pic_04_05

中澤勝一建築の社員大工の1人、原田銀次郎さん

pic_04_06
pic_04_07

大工になりたいと思って、大工職で就職活動をしましたが、求人に出ている会社では自分の理想とする伝統技術を学べるところがみつかりませんでした。インターネットで検索してみると、中澤勝一建築のホームページに、手刻みで作業している写真が掲載されていました。ここならやりたいことができる、そう感じて就職を決めました。
今では、信州新町の古民家再生に携わらせていただけるようになりました。伝統工法を活かした仕事は、他社ではなかなか体験できない。日々いろんな技術を学んでいます。

pic_04_08

古民家の柱はシロアリの被害に合っていることも。痛んだところだけ継ぎ足して、使い続けられる建築を目指している

2021年、2級技能検定「建築大工作業」に挑戦しました。結果は好成績で、技能レベルの日本一を競う技能五輪全国大会の出場もすすめられて参加。2022年も、技能五輪に出場する予定です。難しい技術ばかりですが、出るからには一所懸命技術を培ってから臨みたいと思い、帰宅して2〜3時間、練習をしています。
将来はひとりの大工として一人前になって「この先の世代にも伝統工法の技術を残していきたい」という夢があります。大工職人の中には、身軽になって多くの現場を経験してお金を稼ぎたいと考えて独立する人もいますが、会社という規模で熟練の技術を学び、手刻みでつくる建築に挑戦できる機会が、僕にとっては大切だと実感しています。中澤勝一建築のもとでしっかり学んで、いつかは伝統工法で家づくりをする工務店をつくれるくらい一人前になりたいと思っています。

pic_04_09

中澤勝一建築だから得られる技術の習得に励んでいる原田さん。大工職人として日々成長しています

中澤勝一建築株式会社

住所:長野県長野市松代町東条1697-1
電話:026-278-3763
URL:https://ns-arch.jp
木造在来工法住宅新築の設計・施工
住宅リフォームの設計・施工
古民家再生
小規模店舗設計施工
各種住宅関連資材の販売、施工
ガーデニング設計・施工
不動産取引業

pic_04_10

MENU