title_02_01
味噌汁や田楽、味噌漬けなど、日本人にとってはおなじみの料理に使われる調味料「味噌」。歴史も古く、鎌倉時代にはすでに現代の味噌に近いものが製造されていたと伝えられています。昔は各家庭で自家製の味噌が造られていたことから「手前味噌」という言葉まで生まれましたが、第二次世界大戦後の高度経済成長や女性の社会進出などにより、味噌が家庭で造られることが少なくなって、味噌の製造を専業とするメーカーが生まれました。現在、日本で生産される味噌の約8割を占めている最もポピュラーな味噌が、大豆や米、塩を原料に造られる「米味噌」。長野県は、その米味噌の生産量が全国No.1で、市場に出回る味噌の約45%が長野県産です。県内にはおよそ100軒の味噌醸造所が存在しており、「信州味噌」はブランドとして確立しています。
製造方法は、水に浸けた大豆を煮てつぶし、麹(こうじ)と塩を加えて、仕込んで熟成されます。もっとも重要なのは、味噌の味を左右する麹(こうじ)造り。醗酵する40時間ほどは、温度や湿度調整などに気を遣います。こうした、作業を分担しつつ、職人同士が互いに協力しながら味噌造りを行っています。
pic_02_01

味噌を造る手順

1. 大豆

大豆を丁寧に洗い、煮やすくなるように一晩水に浸けて(浸漬/しんせき)吸水させます。吸水させることで、大豆は2倍量に膨らみます。翌朝、水切りをして、大豆が麹菌(こうじきん)による発酵作用を受けやすくなるように大豆を2時間ほど煮ます。その後、大豆を冷やしますが、熱いまま仕込む方法もあります。なお、大豆の品種や産地(国産・外国産)によって味噌の出来は変わってきます。

miso_pic_02_02-1
miso_pic_02_02-2

2. 米

白米を丁寧に洗い、米の表面の皮や胚芽といった糠(ぬか)などを取り除き、一晩水に浸けて(浸漬/しんせき)吸水させます。翌朝、水切りしてから米を蒸します。蒸すことで、種麹菌(たねこうじきん)の発酵作用を受けやすくなると同時に、雑菌も消滅します。蒸した米は適温まで冷まし、麹室(こうじむろ)の床(とこ)と呼ばれる台で種麹菌を付け、温度管理に気を付けながら翌朝まで寝かせます。翌日、米の一粒一粒に麹菌が付くように米の塊をほぐして空気に触れされる「切り返し」を行います。この際に、匂いを嗅いだり、手で弾力性や感触を確かめて麹の育ち具合をチェックします。五感が試されるこの作業で味噌の出来の善し悪しが変わってくる、もっとも大事な工程です。こうして48時間かけて、麹を培養します。

miso_pic_02_03-1
miso_pic_02_03-2

3. 塩

塩と、前日から仕込んだ麹を計量します。味噌の味は、使用される麹の種類と、大豆と麹の割合、そして塩分量によって微妙に違ってきます。一般に、味噌汁に用いる辛味噌は塩分11~12%の味噌で、麹の使用量が大豆よりやや少ないのが特徴ですが、甘味噌は塩分が半分以下の4.5%前後で、麹を多く使用します。塩分が多く熟成期間が長い辛味噌は旨みが濃厚で、甘味噌は甘みに富み、麹のよい香りが特徴です。

miso_pic_02_04-1
miso_pic_02_04-2

4. 仕込み

味噌の仕込みのメイン工程です。すり潰した大豆と麹、塩を撹拌してよく混合します。工場では、原料を短時間でムラなく混ぜる味噌仕込み用の混合機も多く利用されています。甘味噌は塩分が低く傷みやすいことから、塩分を含んだ熱湯と食用のアルコールを混ぜた「種水」が加えられることもあります。
仕込みタンクに移し、発酵が均一に進むよう、味噌の中の空気を抜くように表面をよく押さえ、平らにならします。

miso_pic_02_05-1

miso_pic_02_05-2

miso_pic_02_06-1

5.味噌蔵で発酵

仕込み桶に詰めて味噌蔵で発酵させます。熟成期間は味噌の種類によって異なりますが、通常の味噌の場合は約2カ月、甘味噌の場合は10~12週間ほど、赤味噌の場合は3~4カ月、天然桶では半年~1年ほどです。なお、味噌の仕込みは1年を通じてコンスタントに行われていますが、酵母は28~30℃ほどの高温で発酵を早めるため、冬場に仕込んだ「寒仕込み(かんじこみ)」の味噌のほうがゆっくりと時間をかけて醗酵し、味に深みがでておいしく仕上がります。

pic_02_07

【コラム】よい味噌とは

まろやかな旨みと麹の甘み、塩味のバランスがとれたものが「よい味噌」です。よい味噌は香ばしい香りを放っていて、なめると甘みがあり、塩味はカドがなく丸みがあります。また、色は食欲をそそる冴える色をしており、粘り気がなく溶けがよく、なめらかでざらつきがありません。反対に黒っぽく硬くなっている味噌や、灰色がかったり色むらがあるもの、酸味が出たり、大豆臭や味噌本来の香りではない異臭のあるものは、出来が悪い味噌と言えます。なお、味噌には、信州味噌のように米麹を使って仕込むもののほか、麦の麹を使った「麦味噌」や、大豆に麹を生やして造る「豆味噌」があります。

味噌Q&A

味噌を造る麹と、酒や醤油を造る麹は違うのですか?
日本には数社の種麹専門メーカーがあり、味噌、醤油、清酒など、用途によってさまざまな種麹が供給されています。味噌用の種麹も、さらに米や麦、豆など、原料やできあがる味噌の色・風味、熟成期間や気候条件などによって、それぞれ用途別に調整された種麹が製造されています。
味噌の賞味期限はどのくらいですか?
一般的に、麹歩合(麹の使用量)が多いものや塩分量が少ないものほど賞味期限が短く、麹歩合が低く、やや食塩含有量が多く、熟成期間が長いものは賞味期限が長くなります。全国味噌業公正取引協議会では、ひとつの基準として、常温で米味噌の甘味噌は3~6カ月、辛味噌は3~12カ月が適当であると定めています。
家庭での上手な保存方法は?
もっとも適しているのは冷蔵庫に保管すること。開封された味噌はなるべく空気に触れないようにして、冷暗所(冷蔵庫)に保管します。常温で保存しても腐ることや食中毒菌が繁殖することはありませんが、夏場は気温の上昇の影響で色が変化しやすく、香りや味が損なわれます。
味噌が健康食品といわれる理由は?
主原料である大豆のアミノ酸のバランスが取れていることや、タンパク質が酵素などの働きで消化吸収しやすいこと、大豆の脂質にはリノール酸(不飽和脂肪酸)が多く含まれていることなどが理由に挙げられます。また、味噌には「ガンのリスクを下げる」「生活習慣病のリスクを下げる」「老化を防止する」「血圧の上昇やコレステロールを抑制する」「美白効果がある」という研究結果が得られています。
pic_brew_navi_01
pic_brew_navi_02
pic_brew_navi_03
pic_brew_navi_04
MENU