建物に色を塗るだけではなく、防さびや防水、遮熱など、新しい視点の塗装により、高い技術が必要となる建築塗装の仕事。さまざまな建築物の外壁や内壁、屋根や床にペンキなどの塗装剤を塗り、吹き付けて模様を付けるなど、建物の仕上げ部分を担う専門技術職です。見た目を美しくすることに加え、塗装をすることで日光や雨、湿気などから建築物を保護します。まずはお客様の要望を聞いて色や塗装剤の種類を選び、イメージ通りに仕上がるように努めます。
外壁塗装の流れ
建物をきれいに長く使ってもらうためには、新築時以外にも定期的にペンキを塗替えたり、保護剤を塗り直すことが必要です。その際、お客様の大切な住宅なので周囲や細部にも気を配り、慎重かつ丁寧に作業を行います。ここでは、外壁塗装の流れを紹介します。
高圧洗浄
塗装を始める前に、強力ジェット水流で、外壁と屋根のカビや汚れを落とします。汚れの上から塗料を塗っても素材に付着しないため、網戸やアルミサッシまで家一軒まるごと洗浄します。
下地調整
壁に傷があればしっかりと補修して埋めた後、塗装の密着性を高めるために、たわしのような道具で表面を傷つける「ケレン」を行います。この作業をするかしないかで、仕上がりの美しさや耐久性に大きく差が出ます。時には、電動工具(サンダーケレン)を使ってさびを除去する場合もあります。
養生
塗装しないところに塗料が飛び散って付着しないように、ビニールや布などで覆います。家一軒を塗り替えるには、養生をしなければいけないところがたくさんあります。
下塗り
本塗りの塗料がはがれないように接着させたり、塗膜に厚みを持たせるために塗料を塗ります。鉄部の下塗りの場合は、さび止め下塗りの塗料を塗ります。仕上げの色とは違う色を塗るので、下塗りが塗れていることを確認できます(写真の場合は左側が下塗り)。
本塗り
下塗りが乾いたら本塗りをします。必要に応じて、下塗り・中塗り・本塗りの3層仕上げを行います。なお、家の塗り替えの工事では、塗料の飛散が少なく幅広い部分を塗れて、高所での作業も安心できるローラーによる仕上げがほとんどです。外壁に凹凸が多い場合も、毛足の長いローラーを用いることで対応可能。また、素材や傷み方によって塗装回数を変えています。
ほかにもこんなところを塗ります
壁面を塗る以外にも、建築に関するさまざまな部分を塗装します。
屋根
ケレンで下処理をしたあと、さび止め塗料を塗る下塗りを行い、紫外線から建物を保護するための上塗りを行います。基本的に計3回塗ることで効果をより発揮することができます。写真では、赤い部分が下塗り、青い部分が上塗りです。
手すり
洗浄して汚れを落とし、ケレンで塗膜が浮いているところやさびを軽く削り取いて塗料を塗ります。小さなさび部分には上からたっぷりと塗って厚い塗膜を付着させることで、目立たせなくするとともに、長持ちするようにしています。
屋根
素材の種類によりますが、木部の場合、基本的には刷毛でならすように塗ります。ローラーのほうが広い面が塗れるので効率がよいのですが、木の目の模様が浮き出てしまうので木部の塗装には向いていません。
●さらにこんな塗装も…
夏場、直射日光が建物に降り注ぐことにより表面温度が上がり、建物内の温度が高まります。そこで、屋根に「遮熱塗料」を塗ることで建物内の温度上昇を抑制し、冷房費の削減につなげることができます。近年は遮熱塗料への関心が高まり、工場などの屋根に積極的に取り入れられています。この塗装の場合も、最初に高圧洗浄で水洗いをした後にケレンで表面を削り、3回に分けて刷毛とローラーで塗ります。大きな工場の屋根の場合には数カ月の作業になることもあります。
取材協力
大森塗装店
長野市を中心に、住宅から高層ビルまで、さまざまな建築物の屋根や外壁、断熱(遮熱)、内壁などの塗装を行っています。美しく仕上げるだけでなく、日光や雨、湿気などから建築物を守る役目も果たしており、高い技術をもつ若い職人が多く、塗装技能士の資格も積極的に取得しています。