98cef610158b716997d51769509e5d5c

技能グランプリは、職業能力開発協会が認定した
特級、一級および単一等級技能士のみが出場できる
技能者の技能レベルを競う最高峰の大会です。
2021年2月に開催された第31回技能グランプリに長野県代表として出場。
約50年にわたり磨いた熟練技能を全国の舞台で披露し、優秀賞として表彰されました。

天然素材の寝具で毎日の目覚めをスッキリと

『寝具の金山』では約70年前の創業以来、天然素材にこだわった寝具の製造・販売をしています。一般的には”寝具”よりも”布団”という呼び方のほうが馴染みがあるかと思いますが、”家具”のように、優れたものをお手入れしながら20年、30年と長く使ってほしいという思いから、当店ではあえて寝る道具=”寝具”と呼んでいます。

7cee79bed74c0db318f674dd07e7473c

現在は科学技術が発達して、化学繊維を使ったお手頃な価格の規格品がたくさん出ていますが、こうしたものは使い捨てになってしまいがちです。「叩けば埃が出る」なんて言いますけども、ポリエステルのような合成繊維は汚れを吸着しやすいんですね。寝具は毎日肌が触れるものですから、皮脂やフケによって雑菌が繁殖しやすくなります。吸湿性も低いので、体温調節のために掻いた寝汗によって蒸れやすくなってしまいます。そうすると夏は暑く、逆に冬は冷えにつながります。
寝具って中が見えないものだからごまかしが利いてしまうのですが、だからこそきちんと作らないといけません。毎日の睡眠環境を整えてもらうためにも、ちゃんと寝ることのできる道具を使っていただきたい。
私たちが提案しているのは主に素材を吟味した綿100%の寝具と、モンゴルに生息するフタコブラクダの毛を使った敷寝具。寒暖差の激しい環境で過ごしているので、日中に放出した汗が夜間に冷えて凍らないよう、放湿性が高く保温性にも優れた性質を持っています。いずれの寝具も、定期的にお手入れすることで長くお使いいただけます。
人間も動物ですから、やっぱり自然に近い環境で寝るのが間違いありませんので、環境負荷の観点でも優れた天然素材の寝具をご提案しています。

6e2a6794097a32c4f39f4a0a09b33600

『寝具の金山』では、身体にも自然にもやさしい天然素材の寝具を提案しています

技能グランプリへ長野県代表として初挑戦

2年に1回開催される技能グランプリの出場には、一級程度の技能士の資格が必要です。母が寝具製作の一級技能士だったのですが、50歳過ぎの頃にずいぶん苦労して取っていましたね。私は当初それほど関心がありませんでしたが、これからも作り続けていくなかで公的な資格があるのであれば、ちゃんと勉強して取っておこうかなと。
おとなりの愛知県わた寝具工業組合が開いている技能講習会にお誘いいただき、資格取得にむけた勉強をはじめました。愛知県は全国でも寝具の生産がさかんな地域なのですが、組合にも所属されている寝具業界の権威の方からご指導いただき、その甲斐あって二級技能士、一級技能士、全技連マイスター、ものづくりマイスターと取得できました。

7ef8cef47faec6267d99f7598ad01f9b

愛知県はグランプリにも熱を入れて取り組んでいるので、私も一級技能士を取得した当時から出場を勧めてもらっていたのですが、競うことにどこか抵抗感があって、あまり前向きではなかったんですね。ただ、今年は愛知県が主催だったことから、出場をあらためて強く後押ししてもらったんです。 「グランプリってどういうものなんだろう」っていう興味もあったので、地元のような場所で開催されるのであれば、出てみようかなと。
グランプリでは、制限時間4時間40分のうちに掛け布団、敷き布団、円形座布団、角座布団の4つを指定された規格・方法で作ります。普段の製作よりもタイトな時間でしたけど、やればできるんだなというのを実感しました。ただ、次の日は本当に足が動きませんでしたね(笑)。

6764fb64dc515f95121b0b92b57615ca

松沢さんがグランプリ当日に製作した布団。製作5時間弱とは思えない丁寧な作りに、約50年におよぶ手仕事の粋を感じます

私は「まずは一度出てみよう」という気持ちで参加しましたが、ほかの参加者たちの意気込みにとても驚きました。みなさん何度も出場されていて「今年こそ優勝したい」と仰っていて。この日に向けて真剣に取り組んできた成果として、本当の職人技というか、職人気質っていうものを至るところで感じましたね。実際に出場してみることで、技能を競う場であること以上に、自分の実力を知ることのできる機会だと感じました。条件が揃えばもう一回出てみようかと思っています。

よい眠りのため寝具に限らない提案を

寝具の製造・販売だけでなく睡眠コンシェルジュとして睡眠環境の指導なども行っていますが、良質な睡眠のためには道具を揃えるだけでなく、やはり生活習慣の改善も重要なんですね。昔は朝の光で起きて暗くなったら寝るのが当たり前でしたけど、いまはどこも夜遅くまで電気が付いていますし、夜遅くまでパソコンやスマートフォンに触れていたりと、ずっと光を浴びている状態になりがちです。結果的に眠りにくくなってしまって、昼間の生活に影響が出てしまいます。

0274d02d2453719956da01dcd821d2b3

店内には所狭しと並ぶ寝具とともに、睡眠に関する情報があちらこちらに掲示されています

段からお伝えしているのですが「1に睡眠、2に食事」なんですね。夜の過ごし方だけ気をつけていても、昼間の生活がちゃんとしていなければ、その後の睡眠に影響してしまいます。どんな食事を摂るかであったり、日中の生活に気を配ることも睡眠の改善につながっていくんです。
『寝具の金山』では効果的な寝方や睡眠環境について学ぶ勉強会や、綿を使った小さな寝具や雑貨を作るワークショップをたびたび開催していますが、食の専門家を招いた講座も企画しています。こうした他分野の方々のコラボなどを継続していきながら、よい眠りについての認識を広げていきたいですね。
生活習慣が乱れてよく眠れないという方には、まずは「なんのために寝るのか」「なんのために起きるのか」を考えていただきたいです。睡眠の目的は、日中活動するために頭と身体を休養させることです。起きたあとの活動が明確であれば、自ずと昼間の生活や夜の眠りを整えようと意識が働いて、ぐっすり眠れるはずです。
グランプリに行ったときにも感じましたが、職人の世界だけを見ても多種多様な分野があるので、若い方々にはぜひいろいろな世界に触れてもらって、自分がやりたいと思えるものを見つけてほしいです。そういうものがあったら人生楽しいし、楽しくなきゃ続かないですからね。

f19296c966284c671aa85247acd0ddc0

松沢 登喜子(まつざわ ときこ)
1954年、長野県飯田市生まれ。一級寝具製作技能士。高校卒業後から父が創業した『寝具の金山』にて寝具の製造・販売に従事。現在は睡眠コンシェルジュとして3代目現社長の兄とともに睡眠環境や生活習慣の改善提案にも取り組む

寝具の金山

住所:長野県飯田市諏訪町27

電話:0265-22-2014
instagram:https://www.instagram.com/hokahoka_tokichan/

4dedce9c14582769751fe226bb4f08de
MENU