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職人を守り、日本一を育てる。
独自の「技能訓練学園」で技能継承の好循環を生む
株式会社岩野商会の挑戦

株式会社岩野商会
代表取締役社長 岩野 貴広さん【中央】
岩野建設専門技能訓練学園講師 田尻 実さん【左端】
寺尾 佳晃さん【左から二人目】
木内 祐太さん【右から二人目】
水間 祐貴さん【右端】

長野市に本社を構える株式会社岩野商会は、内装工事のプロフェッショナル集団として、熟練技能者の日本一を競う「技能グランプリ」の常連企業です。過去に全国1位をはじめ数々の入賞者を輩出しており、直近の第33回大会(2026年)でも「プラスチック系床仕上げ:木内祐太さんが内閣総理大臣賞(金賞 )」「カーペット系床仕上げ:水間祐貴さんが銅賞」「壁装:寺尾佳晃さんが敢闘賞を受賞」するなど、常に業界のトップレベルを走り続けています。

なぜ、同社はこれほどまでに技能者の育成に情熱を注ぐのか。そして、日本一を争う職人たちはどのようにして育っていくのか。社長、技能訓練学園の育成担当者、そして実際に技能グランプリの舞台に立った入賞者の生の声から、岩野商会が築き上げた「技能継承の好循環」の取り組みに迫ります。

職人の生活を守る。業界の常識を覆した「技能社員」雇用の原点

建設・内装業界においては、現在でも「一人親方」や家族経営といった個人事業主の形態が多く見られます。仕事の繁閑に合わせて柔軟に動ける利点がある一方で、職人の生活は怪我や病気、加齢によって不安定になりやすいという側面を抱えています。
岩野商会が現在のような「職人の社員雇用」と「組織的な育成」に乗り出したきっかけは、創業者の強い想いにありました。

 「昔からお願いしていた現場の職人さんたちが、怪我や病気で生活が不安定になってしまう姿を見て、当社の創業者は『これは非常に惜しいことだ、なんとか職人の生活を守らなければ』と考えたそうです。そこから、職人をサラリーマンとして雇用する『技能社員』の体制が始まりました」(岩野社長) 
 しかし当時、職人を自社で抱えるという形態は業界内でも極めて異例でした。同業者や元請けからは「そんなことをやっていては、岩野商会はそのうち無くなるぞ」と懐疑的な目で見られていたと言います。 

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「それでも、見て技術を盗むという旧来のやり方ではなく、会社としてしっかり雇用し育成すれば立派な職人が育つんだ、という実績を証明したかった。だからこそ、技能グランプリなどの大会に積極的に挑戦し、技術力で結果を示すことに力を注いできたのです」(岩野社長)

職人が技術を身につけると「背中に翼が生えて」独立していくことも少なくありません。しかし、同社では独立後も協力関係を築き、共に地域の仕事を支え合う柔軟な体制を整えながら、現在も技能向上への投資を惜しみません。

年間1446時間のカリキュラム。自社訓練施設が育む「確かな基礎」

岩野商会の最大の強みは、自社内に「岩野建設専門技能訓練学園」という充実した教育機関を保有している点です。現場での先輩からのOJTに頼るだけでは、繁忙期などに指導の質が左右されてしまいます。そこで同社は、現場の状況に影響されずに安定して技能を伝承できる体制を構築しました。

学園では、年度初めに「年間1446時間」に及ぶ緻密なカリキュラムが組まれます。
「1週間のうち2日は座学と実習室での技能実習、残りは現場指導員とともに実際の現場へ出て学びます。講師12名、現場指導員12名という全社を挙げた体制で、まずは入社から2年以内に技能検定2級を全員が合格することを目標にしています」(田尻さん:学園講師)

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長野県の認可を受けたこの学園で基礎を徹底的に学ぶことで、若手社員は現場での応用力を飛躍的に高めていきます。また、技術面だけでなく「人間力」の育成にも重きを置いています。
「若者への接し方は、一方的な『指導』ではなく、一緒に伸びていく『育成』の意識が必要です。挨拶や礼儀といった社会常識をしっかりと身につけさせることも、一流の職人を育てる上では欠かせません。現代の名工にも選ばれたベテラン指導員たちの背中を見て、若手は職人としての心構えを吸収していきます」(田尻さん:学園講師)

会社のスローガンは「良い仕事、多くの仕事で日本一を」。

技能検定2級から1級、そして全国大会、技能グランプリへの挑戦、最終的には「現代の名工」へ。明確なキャリアパスが示され、試験の申し込み費用や練習用の材料費なども会社が全面的にバックアップしています。社員が自己負担を心配することなく、技術の研鑽に没頭できる環境が、岩野商会の揺るぎない基盤となっています。

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プレッシャーを力に変える。受け継がれる「日本一」への使命感

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技能グランプリへの出場は、自ら手を挙げる立候補制ではなく、上司や先輩からの「推薦」によって決まります。白羽の矢が立った社員は、名誉であると同時に、並々ならぬプレッシャーを感じると言います。
「自分にそこまで評価してもらえる技術があるのかと、最初は不安とプレッシャーしかありませんでした。グランプリは限られた人しか出られない特別な大会です。しかし、会社が自分の力を試す機会を与えてくれたのだと受け止め、挑戦を決意しました」(寺尾さん)

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岩野商会には、歴代の先輩たちが積み上げてきた圧倒的な実績があります。そのため、周囲からは「出場して当たり前、賞を獲って当たり前」という目で見られることも少なくありません。3度目の挑戦で「内閣総理大臣賞/金賞」を獲得した木内さんは、当時の心境をこう振り返ります。
「先輩たちが『獲って当たり前』の実績を残してきているので、とんでもないプレッシャーでした。しかし、『言われたからにはやるぞ』という使命感がありました。自分たちには、繁忙期であっても会社が練習環境を用意してくれ、周りの社員も応援してくれる土壌がある。だからこそ、獲って当たり前という強い気持ちで臨むことができたのです」(木内さん)

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本社から離れた拠点で働く社員が推薦されたケースでは、現場での施工経験が少ない「カーペット」職種での挑戦という困難な状況もありました。「不明点はすぐに本社の先輩に電話で確認できたり、休日は学園で講師から直接指導を受けるなど、孤独な戦いにならないよう会社全体でフォローアップしてもらったのでしっかりと準備して大会に臨むことができました」(水間さん)

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本番のハプニングも成長の糧に。現場では得られない「心地よい緊張感」

技能グランプリの課題は過酷です。事前に課題の仕様や使用する材料は通達されますが、その難易度は非常に高いものであるため、実力はもちろんのこと、競技の2〜3ヶ月前からの短期集中特訓が勝負の分かれ目となります。
「仕事が終わった後、毎日2時間の練習。休日は1日中、練習に没頭しました。普段の現場では使わない材料や工法が求められ、無駄な動きをしていたら絶対に制限時間内に終わりません。初出場の時は『これ、本当に終わるのかな』と手探り状態からのスタートでした」(寺尾さん)

競技中は、審査員の厳しい目が光る中、張り詰めた空気が会場を包みます。しかし、岩野商会の選手たちは学園で1年間みっちりと「基本」を叩き込まれており、さらに積み上げたスキルの引き出しの数が違うため、いざという時の対応力が違います。他の出場者が基本動作で戸惑う中、岩野商会の選手たちは戦略的に手順を組み立て、着実に作品を仕上げていきます。

 「大会には、必ずと言っていいほど予期せぬハプニングが起こります。しかし、それを乗り越えていくことで、普段の現場でもちょっとしたことでは動じない精神力が身につくんです。現場では絶対に味わえない『心地よい緊張感』と、終わった後の『達成感』。この経験は、職人としての大きな財産になります」(寺尾さん)

「出るからには会社の代表なんでというつもりで頑張りました。大会での受賞の喜びや、あと一歩届かなかった悔しさは、日常の業務に戻った際の大きなモチベーションへと変わります。」(水間さん)

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岩野商会では、手厚い教育を受けた社員が「会社から受けた恩恵を、次は後輩へ返そう」という意識を持ち、自らが学んだ技術と経験を次世代へ伝えていくという素晴らしい好循環が生まれています。

 「後輩たちには、プレッシャーを感じすぎず、会社の代表として選ばれた誇りを持って、純粋に大会を楽しんできてほしい。そして、全国のすごい選手たちの技を見て、何かを感じ取って現場に持ち帰ってきてほしいですね」(木内さん)

長野県は古くから「ものづくり県」として発展してきました。地域の技能レベルをさらに高めていくためには、岩野商会のように企業が人材育成に確固たる信念を持ち、投資を惜しまない姿勢が不可欠です。職人の生活を守るために始まった一つの決断は、今や日本トップレベルの技能者を次々と生み出す大きなうねりとなり、長野県の建設業界の未来を力強く切り拓いています。

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株式会社岩野商会

本社|長野県長野市大字北長池2051番地

https://www.iwano.co.jp/

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