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青年技能者の技能レベルを競う技能五輪の出場者に、
当時の経験や心境の変化を聞く「技能五輪のアフターストーリー」。
山京インテック株式会社で部品加工を担当する松下さんは、
2012年に長野県内で開催された第50回技能五輪全国大会の旋盤職種に出場しました。

挫折をきっかけに機械加工の世界へ

山京インテック株式会社は、電子機器の設計開発や組立、機械加工、システム開発など、幅広いサービスを一貫して提供しており、私は機械工作部で主に旋盤加工を担当しています。旋盤とは、加工したい素材を回転させながら刃物を当てて削り出す機械です。弊社では自動車や航空機、宇宙関係の部品の試作開発や製造を多く受注しています。

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父や兄の影響で、ものづくりが身近な環境で育ちました。兄の車に搭載された、メーカー独自のエンジンにすごく魅力を感じまして。将来はその自動車メーカーに自動車整備士として就職するため、父や兄の母校でもある工業高校の機械科へ進学。そのあとは飯田市内の技術専門学校の自動車整備科に進み、整備士の資格を取得しました。憧れだった企業の面接をいよいよ迎えたのですが、結果は残念ながら不採用でした。他のメーカーに進む道もありましたが、あくまでもその企業に就職するのが夢だったので、すっぱりと整備士の夢を諦めることに。

そんな頃、自動車整備の実習でディーゼルエンジンの分解や組立を学ぶ機会があったのですが、とある部品との出合いが機械加工の道に進むきっかけになりました。ものすごく精度の優れた部品で、一切のガタつきなく筒の中にピストンがスーッと滑らかに入っていくのを見たら、本当に感動したんです。
自動車整備は誰かが作ったものを直す仕事ですが、このときに「自分で一から製品を作ってみたい」という思いに駆られました。すぐに地元である飯田市内で機械加工の求人を探して、縁あって現在の職場に採用してもらいました。

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技能五輪の練習で徹底的に学んだ旋盤のいろは

私が就職したのは2011年4月ですが、それよりも前に会社から「2012年秋に長野県内で開催される技能五輪全国大会の旋盤職種に出場しないか」と勧められました。興味本位で「ぜひやらせてください」とすぐに伝えました。そのときはまだ、練習の過酷さを知らなかったので(笑)。

入社後すぐに、大会に向けて地域の企業が共同で立ち上げた『スキルアップ塾』へ参加しました。旋盤は高校の授業で勉強していたものの、実際になにか作ったことはなかったため、原理原則から加工方法まで、ゼロから講師の方に教えていただきました。入社して間もなくだったので、大会の練習と並行して会社の仕事も覚えなければいけません。日中は社外で大会に向けた汎用旋盤の練習。そのあとは会社で数値制御旋盤の練習や業務。大変な日々でしたが、とても楽しかったですね。自分の手でただの鉄の塊から光沢をもったきれいな部品へと仕上げていくことに、やりがいを感じていました。

およそ1年半の練習期間を経て、全国大会当日を迎えました。制限時間5時間のうちに複数の部品を加工して組み立て、ひとつの製品を作ります。事前におこなわれた予選会ではバッチリだったので自信はあったのですが、目の前に並ぶギャラリーに緊張してしまったり、当日はじめて触る旋盤機の使い心地に慣れなかったりと、練習とは大きく異なる環境のなかで実力を発揮できず、正しく製品を組み上げられませんでした。

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第50回技能五輪開催期間中の練習風景

弊社では主に数値制御旋盤を用いるため、大会のために練習を積んだ汎用旋盤を使う機会は少ないのですが、基礎から徹底的に学んできたことが仕事に活かされています。入社当時には先輩に言われるがままに取り組んでいた作業も、大会出場後には原理原則まで体型的に理解できるようになりました。大会で思い通りの力を発揮できなかった悔しさは鮮明に覚えていますし、心残りはありますが、出場して本当によかったと思っています。

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大会の練習で身につけた感覚を活かして、コンピュータによる数値制御で刃物の位置や速度をコントロールする機械も精緻に操作できるようになったそう

自身の経験を後進のために活かしたい

大会が終わると、業務に本格的に取り組むようになりました。それまでは大会に向けて同じ製品を繰り返し作ってきたのに対して、仕事となると毎日違う製品を限られた時間や材料のなかで作らなければなりません。なにより大会と仕事で最も異なるのが、製品の先にお客様がいること。自分の技術を磨くために作業をしていた大会以前とは、ものづくりに対する考え方が大きく異なります。常にお客様のことを思って、100パーセント自信のもって納められる製品づくりを心がけています。

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現在は二人目の子育てのために休職していますが、今後も子育てと両立しながら仕事をしていく予定です。やっぱり、ものづくりが本当に大好きだから。機械加工の仕事にとてもやりがいがあります。そう感じられるのも、技能五輪に打ち込んで身につけた技術があってこそです。いまでは自動車メーカーの面接に落ちてよかったとさえ思っています。あの挫折がなかったら、いまの人生はなかったので。

2021年からは長野県の推薦を受けて、機械加工部門ではじめての女性技能検定員としても活動しています。単に資格を取得するだけでなく、根本的なところまで理解した技術者を育成できるように邁進していきたいです。今後はなるべく多くの人に、技能五輪や会社で培ってきた技術や知識を伝えていきたいと思っています。

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松下 麻里子(まつした まりこ)
1991年、長野県飯田市生まれ。二級機械加工技能士(普通旋盤)、一級機械加工技能士(数値制御旋盤)。2011年、山京インテック株式会社入社。精密機器などの部品加工に従事。2012年、第50回技能五輪全国大会の旋盤職種に出場。

山京インテック株式会社

住所:長野県飯田市時又127
電話:0265-28-5000

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